「ぼく、みんなまちがったことをしてしまった。」
バスチアンは言った。
「みんな、考え違いをしていたんです。月の子は、僕に沢山のものをくださったのに、僕はそれでもって、自分にもファンタージエンにも悪いことばっかりしてしまったんです。」
アイゥオーラおばさんはバスチアンを長いこと見つめていた。そして、言った。
「いいえ、私はそうは思わない。これまであなたは『望みの道』を歩いてきたの。この道は決してまっすぐではないのよ。あなたも大きなまわり道をしたけれど、でもそれがほかでもないあなた自身の道だったのよ。……
それで、あなたは、いのちの水の湧き出る泉さえ見つければ、人間世界に戻れるの。でも、そこはファンタージエン世界でも最も深く秘められた場所なのよ。だから、そこへゆく道は簡単ではないわ。」
そして、しばらく口をつぐんでいた。それからまた言葉をついだ。
「でも、そこへ通じる道なら、どの道も結局、正しい道だったのよ」
それを聞くと、いきなりバスチアンは激しく泣き出した。なぜだか、自分でも分からなかった。しかし、それは胸の中で固くなっていたわだかまりが解け、涙になって流れ出したような気持ちだった。すすりあげ、しゃくりあげ、あとからあとから、とめどもなく涙が流れた。アイゥオーラおばさんはバスチアンを膝に抱き上げ、やさしくやさしくなででくれた。バスチアンはおばさんの胸の花の中に顔を埋め、思う存分、泣いた。泣いて泣いて、泣きつかれるまで泣いた。
(「はてしない物語」540頁)
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